煉瓦坂の少し奇妙なX'mas
 思い立ったら吉日で、駅近デパートに入ってるHANDSに寄って帰ることにした。この商店街は俺の実家があったところだけど、今は駅を挟んだ反対側に住んでいる。駅に向かう道すがら街並みを眺めてみれば、街は順調にクリスマスに浸食されていた。街灯のちょっとした飾りとか、店に貼られたポスターとか。
「改めて見ると色々あるねぇ。あ、そうだ」
 こういうお祭り的なのって環は嫌う。俺はワイワイみんなと遊ぶのが好きだけど、環はいつも一人だな。でも寂しいとかそういうのは全然なさそうだ。逆に人が大勢いると嫌そうにする。そんな風景を見渡して、思い出してクラッチからスノードームを取り出す。やっぱり過剰に雪で埋まってる。そうしてひっくり返してさかさまにした辻切の町並みは、昼見たよりも明るいような気がした。景色はすっかり藍に近づいたからかもしれない。
「サンタさんかぁ。ファンタジーだとトナカイはこの街の上を飛んでくのか?」
 当然ながらドーム内の市街に煙突はなく、自分が住む高層マンション自体が雪に突き刺さった煙突のように見えてくる。そうしてガラスの表面をつるりと撫でてみた。出口がない。
「この世界はいいことも悪い事もこの中に閉じ込められて、トナカイは外からやってくるわけだ。プレゼントを持って?」
 そういえばそもそもサンタクロースは日本の外からやってきた文化だな。プレゼントくれるおじさんって意外にサンタクロースのことは良く知らないなと思いながら空を眺めれば、駅前のツインタワーがやはり空に向かって突き出ていた。

 HANDSでサンタの帽子を5つ、高さ50センチくらいある綿の靴下の形のバッグを1つ、それからとりあえずのプレゼントによさそうなものを探して周囲を見渡す。いつも店のみんなに何か送る時は大抵小さめで少々高級な菓子だった。甘いものが好きな人は喜んでくれるし、そうでなくても誰かにあげられる後腐れのない消耗品。
 俺は甘いものはわりと好きだけど基本的には知り合い以外は断って、勝手に置いて行かれるものはそのまま捨てていた。この仕事を始めてから、プレゼントは嫌な記憶が多すぎる。そんな悪意がこの街にはどこにでも転がっているんだ。
 そういえばサンタも勝手にプレゼントを運んできておいていく。親がくれたとわかっているから安心できたのかもしれないな、とふと思う。
 とはいえしばらく店に置いておく予定だから、食べものはナシだ。そのままエスカレータで下りながらいくつか店を眺めつつ、結局簡単な文具と入浴剤なんかを買い込んで、大きな靴下バッグに投げ入れる。
 俺が選ぶプレゼントって高校のころから全然進歩してない。
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