時田君と私の秘密の契約〜毎週金曜日の秘め事〜
 自分の言ってしまった事を直ぐに訂正したいが、どうやらそれはもうさせてもらえないらしい…。私は時田くんに手を引かれ、お会計を済ませて高架下の飲み屋を出ると、その場所から一番近くにあるラブホテル街に連れて行かれた。

 「ちょっ、ちょっと待って時田くん⁉︎本気で私とそういう関係になるの⁇」

 手を振り切って逃げ出す余地は充分にある。時田くんは別に私を不同意にここまで連れ出している訳ではない。時田くんの手を振り解いてこの場から去れない私は、自分の意思で同意の元ここに来ているのと一緒だと自分でも分かっていた。

 「俺は本気です。向日葵さんここで良いですか⁇」
 
 お城みたいな如何にもという見た目のラブホテルの前に止まると、時田くんは私にここで良いのか⁇と確認するように訊ねた…。 

 ここで拒否しなければ、時田くんの申し出を承諾したのと同じ事だと、私は分かっていた。時田くんは私に逃げ場を与えてくれているのだ。

 (……今ならまだ引き戻せる。逃げなくちゃ……)

 心の中では分かっているのに、私の身体がそれを許さない。私の中の女性の部分が、彼を欲しがっているのだ。

 「……いいよ……」

 時田くんのスーツの裾をそっと握りしめて、私は自分でも信じらない言葉をポツリと吐いていた。

 私が拒否して逃げるものだとばかり思っていたのか、時田くんは少し驚いている。

 「じゃあ行きましょう。でも俺“あれ“持ってないんで今から近くのコンビニで買ってきます」

 彼の律儀な言葉に少し驚いてしまった。あれとは、あれの事だろう…⁇

 「…買ってこなくていい…私持ってる…」

 恥ずかしすぎる言葉に私は思わず時田くんから顔を逸らして両手で顔を覆った。なぜ持っているのかと言われれば、私は今日正に程良くワンナイトをできる相手を探していたからだ。女性が持っていても全然おかしな事ではないと、この前目にしたスマホのコラムに書いてあった。
 時田くんはそんな私に少し驚いたようだけど、「分かりました。じゃあ入りましょう」と言って私をラブホテルの中へと誘導した。
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