傲慢すぎる警視に衛られて愛される
中田は依然、愛に抱き着いたままだ。


「ねえ、なんでさっきから声を出さないの?」


中田が笑いながら言った。


「もしかして、声が出ないほど怖いの? 嬉しいなぁ、感激しちゃうな」


愛はぎゅっと目を瞑った。


(落ち着け、落ち着け)

「それにしても、酷いよ」


中田の声が、耳元で続く。


「どうして俺じゃない人と結婚するの?」


愛は答えなかった。


「本当はキミもあんな男と結婚したくないんだよね? 俺のことを待っててくれたんだよね?」


愛は首を左右に振った。

中田の腕に力が入った。


「ここは俺たちにとって最高の場所だ」


愛は首を振る。


(最高の場所って、お姉ちゃんと結婚するつもり!? なんなの! こいつ!)


怒りが沸々と湧いた。


「俺と君の最後の場所として最高の場所だ」


愛はハッとした。


(最後の場所?)

「教会は結婚式でもあるけど、葬儀も出来るんだ」


言葉の意味を理解した瞬間、背筋が凍った。

中田の手がポケットへ伸びた。

ゆっくりと、確かめるように。


「ねえ、一緒に天国に行って、幸せになろ」


金属の光が、愛の視界に入った。

ナイフだった。


(来る)


愛の全身に力が入る。


(首だけ守れば、なんとか)


愛は気付かれないようにゆっくりと腕を動かした。
< 121 / 164 >

この作品をシェア

pagetop