傲慢すぎる警視に衛られて愛される
今まで聞いたことのない逢坂の怒りの声に愛はびっくりして固まった。

鳴海が駆けてくるのが横目で見えた気がしたが愛は逢坂から目が離せないでいた。

肩にナイフを刺したまま、逢坂は中田を地面に押さえ込んでいた。


「手錠!」


鳴海が叫び、駆け付けた警察官たちが中田を取り囲み手錠をかける。


「逢坂、離せ。逢坂!」


鳴海に言われて、ようやく逢坂が中田を解放した。

立ち上がった中田が逢坂を睨みつけた。

逢坂は息を整えながら、静かに言った。


「殺人未遂だ。今度は長くなるぞ」


中田が何かを叫びながら暴れたが、警察官たちに引きずられていく。

声が遠ざかり、やがて聞こえなくなった。

石畳の上に、静寂が戻った。

真理恵が駆け付けてきた。

愛は茫然と立ち尽くしたまま、逢坂を見つめていた。

逢坂も愛を見ていた。

2人とも、しばらく動けなかった。

愛はハッとした。


「逢坂さん、肩」

「ああ」


逢坂は何でもないように、肩からナイフを引き抜いた。


「きゅ、救急車!」

「大したことない」

「でも血が」

「大丈夫だ」

「でも!」


逢坂がジャケットを脱ぐと防弾ジョッキが見えた。

ホッとして愛の目に、涙が浮かんだ。


「なんで泣くんだ」

「だって!」

「大したことない。ちょっと貫通はしたけど」

「そうじゃなくて! なんで!」

「は?」

「わ、私、まだ何もされてないんですけど!」


逢坂がイラっとした表情を愛に向けた。


「抱き着かれてたじゃないか。十分だろう」

「でも怪我しないと!」

「俺がしたんだからいいじゃないか」

「でも、なんで――」


愛がそれでも涙を流しながら喚くので逢坂が遮るように叫んだ。


「うるさい! 身体が勝手に動いちゃったんだ!」
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