傲慢すぎる警視に衛られて愛される

7章

廊下を歩く逢坂の足が、自然と屋上への階段へ向かっていた。

屋上のドアを押すと、湿った風が顔にぶつかってくる。

曇り空だった。

雨が降る前の、重たい空気。

逢坂はドアにもたれてポケットに手を突っ込んだ。


(泣きはらした顔)


真理恵の言葉が、耳の奥にこびりついている。

見ていないわけがなかった。

今朝、愛が出勤してきた時、逢坂は一瞬で気がついた。

化粧で隠せていると思っているのだろうが、目の縁がわずかに赤かった。

昨日より少しだけ、瞼が重そうだった。

そのくせ、声だけやたらと元気で。


(バカか)


そう思った。

逢坂は空を仰いだ。

雲が低い。

風が吹くたびに、古いフェンスが微かな音を立てる。
< 52 / 164 >

この作品をシェア

pagetop