傲慢すぎる警視に衛られて愛される
3年前、逢坂は捜査一課にいた。

深夜に鳴ったスマホの画面には「陽太」の文字。

それだけで、逢坂は何かが起きたとわかった。

幼馴染の目代陽太(めじろようた)から深夜に電話がかかってくることなど、今まで一度もなかった。

病院までタクシーで飛んでいった。

救急病棟の待合室に陽太はいた。

ソファに腰を落として、両手を固く組んで祈るような姿勢のまま、微動だにしていない。


「陽太」


声をかけると、ゆっくりと顔が上がった。

血走った目が逢坂を捉えた瞬間、陽太は立ち上がった。勢いそのままに逢坂の胸倉を掴む。


「お前」


声が震えていた。


「俺が護るって言ったよな」

「陽太」

「じゃあ、なんだ、このざまは」


逢坂は陽太の手を振りほどかなかった。

振りほどけなかったのではない。

振りほどく資格が、自分にはないと思ったからだ。

江口朋がストーカー被害を相談してきたのは、4ヶ月前だった。

陽太の婚約者であり、逢坂にとっても子供の頃から知っている幼馴染。

いつも笑っていて、場を明るくする人だった。

陽太が惚れた理由が、逢坂にもよくわかる。

加害者は朋の元同僚だった。

交際を申し込んで断られてから、執拗につきまとうようになったという。

職場へのしつこい連絡、帰宅ルートでの待ち伏せ、自宅への無言電話。

逢坂は管轄外だったが証拠を集め、加害者に警告し、上に掛け合って監視体制を整えた。

朋は最初こそ怯えていたが、逢坂が関わるようになってから少しずつ表情が戻ってきた。


「衛くんがいるから、大丈夫だと思えるの」


そう言って笑った顔を、逢坂は今でも鮮明に覚えている。

その3日後だった。

加害者が朋の帰り道を待ち伏せし、刃物を持って襲いかかったのは。

通行人の通報で加害者はその場で取り押さえられた。


「護るって、言ったんだよ、お前が」


陽太の声は怒鳴っているのか、泣いているのか、もうわからなかった。

逢坂は黙っていた。

陽太の手が、ゆっくりと逢坂の胸倉から離れていく。

力が抜けたように、陽太はその場に崩れ落ちた。


「なんで護ってくれなかったんだ」
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