傲慢すぎる警視に衛られて愛される

9章

夜の高層マンションは、煌々と明かりをともしていた。

ここは美憂の婚約者のマンションである。

少し離れた場所に停めた車の中から、愛はマンションのエントランスをじっと見つめていた。

手はドアの取っ手にかかったまま、離れない。

後部座席では竹内がパソコンの画面に向かっていた。


「そんなずっと気を張っていたら持ちませんよ」


振り返った。

竹内はパソコンを操作したまま、こちらを見ていない。


「山下美憂さんには家から出ないように言ってあるし、婚約者が帰ってくるまでは母親もいるんですよね。だったら大丈夫ですよ」

「そうなんですけど」

「それに、このマンションはセキュリティがしっかりしてるし、管理人も24時間いる。問題ないです」


愛はしばらく竹内を見つめた。


「ありがとうございます」


竹内の手が止まった。

ゆっくりと顔が上がる。


「は?」


不機嫌そうな目が愛を見た。


「なんでお礼?」

「だって、私を慰めるためにそう言ってくれたんでしょ」


竹内の顔が、みるみる赤くなった。


「なっ! 違うし! 鬱陶しかったから言っただけだ! 勘違いするな!」


愛は思わず笑った。


「気持ち悪い」


竹内は吐き捨てるように言って、ヘッドフォンをぱっと装着しパソコンに向き直った。

愛はクスッともう一度笑って、窓の外に視線を戻した。

気がつくと、手はドアの取っ手から離れていた。
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