傲慢すぎる警視に衛られて愛される
外はすっかり暗くなっていた。

車に乗り込むと、助手席の愛と運転席の逢坂の間に、早速、重い沈黙が落ちた。

エンジンをかけながら逢坂が言った。


「邪魔はするな」

「約束はできません」

「は?」

「邪魔はしません、と言いました」


逢坂は愛をじろりと見た。

愛はまっすぐ前を向いたままだ。

逢坂は何も言わず、車を出した。

しばらく走ったところで、カーブを曲がった拍子に対向車のライトが車内に差し込んだ。

その瞬間、逢坂が舌打ちした。


「シートベルト」

「してます」

「してない」

「え、し――」


愛が確認しようとした瞬間、逢坂の左手が伸びてきた。

愛の身体の前を横切るように手が動き、シートベルトを引っ張ってロックを確認する。

一瞬だった。

でも逢坂の腕が視界を遮って、愛は息を止めた。

信号が赤になって車が止まっていることだけはわかった。

逢坂の髪が頬に触れて愛はドキッとした。

シートベルトはしっかりとされている。

逢坂が確認して離れた。


「……してるじゃないですか」

「ならいい」


逢坂はそれだけ言って、また前を向いた。

愛は正面を向いたまま、自分の心臓が驚くほど、やかましいことに気がついた。


(何、どきどきしてるの、私)


頬が熱い。

窓の外の夜景を見るふりをして、愛はそっと顔を逸らした。

逢坂は何事もなかったように運転を続けている。

ちらっと愛は逢坂の方を見るが、顔までは見れず、ハンドルを握る逞しい腕だけを見つめていた。


(本当に、なんなの)


愛は小さく深呼吸した。

同じタイミングで逢坂からも息を吐く微かな音がした。
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