傲慢すぎる警視に衛られて愛される
翌日、愛は全員の顔を見回してから、深く頭を下げた。


「お願いします。姉を今度こそ護りたいんです。力を貸してください」


誰も、すぐには口を開かなかった。

真理恵が心配そうに愛を見つめている。

竹内はヘッドフォンを外して、珍しく愛の方を見ていた。


「山下さん、顔をあげて」


鳴海の声に、愛はゆっくりと顔をあげた。


「必ずお姉さんを護ろう」

「ありがとうございます!」

「ただ……この数日間、動きがないんだよな」

「動きがないと、こっちも動けないのよ」


真理恵が続けた。


「ずっと見張っているわけにもいかないし、もしかしたらどこかで様子を見ている可能性はあるけど、お姉さんたちの話では全く気配を感じないって」

「そうですね……」

「このまま、結婚式まで何もしないつもいかもしれないなぁ」


鳴海が腕を組んで言った。


「結婚式まで時間ないわよ」


真理恵の言葉に、室内の空気が重くなった。

鳴海が逢坂を見た。

それまで黙っていた逢坂が、ソファから身を起こした。


「囮捜査をする」


愛が逢坂を見た。

愛の心臓がどくんと嫌な音を立てる。


(おとり……そうさ?)


勇気を出して、協力をお願いしたのは愛自身だが、囮捜査は頭になかった。

勤務初日に公園で怯えた様子の被害者を思い出す。


「それって……姉を囮に使うということですか」

「そうだ」

「この前の、鈴木真凛さんと同じことを?」

「そうだ」


激しく心臓が鳴る。


「それは……できません」


愛の声は静かだった。


「今、俺たちに助けを求めたのはなんだ」

「それは……」

「覚悟もなく頭を下げるな。もう一度、刑務所に入れるにはこれしかない」

「他に……方法を一緒に考えてください、お願いします」


愛の声は切実だった。


(姉を囮には出来ない。これ以上、傷は作れない。どうにか未然に防ぎたい)


結局、愛の考えはそう簡単に変わることはなかった。


「だったら自分で考えろ」


逢坂は呆れるように立ち上がり、部屋を出ていった。

ドアが苛立たし気に閉まった。

愛はその場に立ち尽くしていた。

握りしめた拳が、小さく震えていた。

真理恵が立ち上がりかけたが、鳴海が小さく首を振った。

室内に、静寂だけが残った。
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