無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 リディアが買ってあげたばかりのズボンは、少し丈が短くくるぶしまで足が出ている。足が長くて羨ましい限りだ。

「じゃあ、早速傷の状態を──」

 彼に近づいたリディアはそう言いかけて、ひゅっと息を呑む。

(これって、フォシニの印紋? それに、こんなに鞭打ちのあとがあるなんて)

 彼の脇腹部分には、円形の痣のような印が付いていた。父であるグリーン子爵のフォシニにもついていたので、間違いないだろう。
 フォシニの印紋とは、魔法使いが自分のフォシニから魔力を奪うための契約を結ぶ際に付ける印だ。つまり、この男はフォシニとして奴隷商に売られる前も、誰かのフォシニとして生きていたということだ。

(この人もジェイみたいに、まだ小さな子供のころからフォシニとして生きていたのかしら?)

 男の体には、リディアが破れた服の隙間から見た痣の他にも無数の傷があった。完全に傷口が塞がったものの皮膚に痕だけが残った古いものから、まだかさぶたにもなっていない新しい傷まで様々だ。
 
「……酷い。痛かったでしょう」

 リディアは男の前に座り込むと、傷の手当てを始める。
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