無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 イマンはリディアに薬の納品の対価を手渡すと、軽く片手を上げる。
 リディアはぺこりと頭を下げてから、店を出た。



 薬の納品を終えたリディアは、レイと一緒に裏通りを歩く。
 ふと、リディアは人通りの少ない路地の向こうを見た。

「レイを買ったのは、この通りだったね」
「うん」
「あのとき、どうして逃げ出さなかったの? レイだったら簡単に逃げ出せるはずなのに」

 リディアが聞くと、レイは宙に視線を投げる。

「首輪をされていると、ご主人様に反抗すると首が締まるから外してほしかったんだよね。奴隷商はフォシニ用の首輪の鍵を持っているはずだから、機会を見て奪おうと思ってたんだ」

 リディアはひゅっと息を呑む。

(首が締まる?)

 確かに、競売時にレイは奴隷用の首輪をしており、リディアが彼を買った際に鍵を渡された。あの首輪にそんな機能が付いているなんて、リディアはちっとも知らなかった。

(フォシニって、知れば知るほど嫌な制度だわ)

 こんな制度、なくなってしまえばいいと思う。けれど一方で、魔法使いたちによって人々の生活が守られているのも事実だ。
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