無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 こういうとき、リディアは自分の非力さを感じてやるせなくなる。


「どうして私が首輪を外したとき、逃げなかったの?」
「リディアはいい人な気がしたから。それに、ひとりで生きるには何をすればいいのかわからなかったのも本当だったし」
「そっか」

 リディアはレイの横顔を窺い見る。やせ細っていた体は逞しくなり、すっかり見違えた。

(そういえば、レイのフォシニの印紋──)

 レイの印紋はシリルのおかげで随分薄くなったが、そこから変化がない。それどころか、これ以上薄くするのは無理だと判断したシリルが治癒を中断して以降、徐々にまた濃くなってきているようにすら見えた。

「ねえ、レイ。レイの印紋について、もう一度師匠に相談しに行こうよ」
「え?」
「まだ消えてないんでしょう?」
「うん」

 レイは頷く。

「じゃあ、行こう」

 治療を中断してから一カ月以上たっているので、もう一度相談してもいい頃だろう。
 リディアはレイの手を取と、シリルの何でも屋に向かって歩き始めた。

「師匠、こんにちは!」

< 111 / 221 >

この作品をシェア

pagetop