無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 レイは王子かもしれなくて、それなのにリディアと一緒にいたいという理由でここに留まろうとしている。

 王宮魔術師を辞退するのとはわけが違う。
 もし本当にそうなら――レイには、本来歩むべき人生があるはずだ。

(だめ。このままだと、レイの人生を私が潰しちゃうかもしれない)

 リディアはぎゅっとこぶしを握った。
 


 その夜。
 カーティスとシリルが帰ったあとも、リディアは落ち着かなかった。
 台所で食器を洗いながらも、何度も昼間のことを思い出してしまう。

「リディア。お風呂沸けたよ。先に入る?」

 お風呂場から、レイがひょこっと顔を出す。
 いつもと変わりない態度なのに、なんだかレイが遠くに感じた。

「……ねえ、レイ」
「うん。何?」
「その……」

 どう切り出せばいいかわからず、リディアは口ごもる。
 フォシニとして生きてきたレイが、自分を助けてくれたリディアのことを慕っているのは重々承知している。
 だからこそ、これはリディアからレイに言わなければならないと思った。

 リディアはすうっと息を吐いて深呼吸すると、レイを真っすぐに見つめる。

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