無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 リディアは咄嗟に走って椅子を掴む。持ち上げて殴りかかろうと振り返ったら、楽しげに笑う男と目が合った。

(こいつ、なんで笑って──)

 リディアの意識は、そのまま闇に呑まれた。


 ◇ ◇ ◇


 リディアが消えた直後、レイは混乱していた。
 すぐにしゃがみ込んで地面を確認するが、転移陣は既に消えたあとだ。

「リディア! リディア!!」

 自分が付いていながらなんたる不覚かと、レイはぐっと唇を噛む。

 黒幕がレイの予想通りの男であるなら、彼はリディアを殺すことに躊躇しないだろう。もしかしたら、散々いたぶって死にゆく様を楽しむ可能性すらあった。

「すぐに捜さないと」

 そのとき、「レイ?」と呼ぶ声が聞こえた。レイはハッとして顔を上げる。

「先生!」
「やっぱりレイか。お前、なんでこんなところにしゃがみ込んでるんだよ。今追われている身なんだぞ。わかってるのか!?」

 シリルはレイのほうに駆け寄る。

「……先生、リディアが誘拐された」
「は?」
「リディアが誘拐されたんだ! すぐに捜さないと!」

 レイは立ち上がる。

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