無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
「ご主人様は毎日のように俺から魔力を大量に奪っていった。魔力をたくさん奪われすぎると、体調が悪くなるんだよね。寒いし、だるいし、つらいし。でも、抵抗すると殴られるし鞭で打たれるから。ご飯を抜かれるのが一番つらいかな」

 その横顔には、悲しみも怒りもなかった。長い間、彼にとってそれが当たり前の日常だったのだろう。

「何回目かの脱走かわからないけど、無我夢中で逃げてフォシニの奴隷商を見つけて売り物の奴隷たちの中に隠れたんだ。そうしたら、リディアが買ってくれた」

 レイはふわっと笑う。リディアは胸の奥がぎゅっと痛むのを感じた。

「……ここでは、誰も殴らないから大丈夫」
「知ってる」
「魔力も奪わない」
「うん」
「だから、安心してね」
「うん、そうだね」
 
 レイは濡れた服を竿にかけると、リディアのほうを振り返る。

「でも、いつか追い出されちゃうかもしれない」

 レイはまっすぐにリディアを見る。
 リディアはたまらず、洗濯籠を置いた。

「レイ」

 彼の前に立ち、できるだけやわらかく言う。

「前にも言ったでしょう。あなたを家から追い出したりしないって」
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