無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
「そんなに緊張なさらず、是非、アシュレイ殿下とご一緒に気軽にいらしてください」
「……はい」

 気軽になんて行けるわけがないが、リディアはとりあえず頷く。

「それでは、失礼します」

 王宮魔術師はぺこりと挨拶をすると、リディアの家をあとにした。



 数日後、リディアはレイと共に王宮にいた。初めて入る謁見室。国王は、リディアとレイを見て目を細める。

「ふたりとも、よく来てくれたな」

 玉座に座った国王は、ふたりを見下ろす。
 他愛もない話を数分したのちに、国王は本題を切り出した。

「アッシュ。今一度、聞こう。王宮へ戻らぬか?」

 国王はレイに、静かに問いかけた。

「そなたが受けた苦痛や悲しみを償いきれるものではないが、今からでも本来の地位と暮らしを与えたいのだ」
「王宮には戻りません」

 レイは何の迷いもない様子で、はっきりと答える。隣にいたリディアはぎょっとした。

「レイ? どうして? 王宮に戻れば、今よりずっといい暮らしができるんだよ?」
「でも、王宮にはリディアがいない。俺はリディアと暮らす」

 リディアは絶句した。

< 214 / 221 >

この作品をシェア

pagetop