無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 軽口を返しつつも、リディアは臼の中で薬草を砕く手を止めない。
 室内には至る所に乾燥させた薬草が吊るされ、棚には色とりどりの瓶が並ぶ。複数の薬草から漂う独特の匂いに、レイから漂う石鹸の香りが混じる。

「……レイ。なんか髪の毛の色が薄くなった?」

 ふと、視界の端に映るレイの見た目に違和感を覚えて、リディアは尋ねる。
 奴隷商から買い取ったとき、レイの髪の毛は墨のように真っ黒だった。しかし、今はなんとなくグレーのように見える。少なくとも、墨のような黒ではない。それに、瞳の色も薄くなったような。

「そうかな? よくわかんないけど」
「そっか。気のせいかな」

 まあそんなに気にすることでもないかと、リディアは思いなおす。
 しばらくすると、臼の中の薬草は綺麗な粉状になった。リディアはそれを、薬屋に卸すための瓶に入れ替える。

「レイ、これ洗ってくれる」
「ん、わかった」

 リディアが振り返らずに器を差し出すと、レイは素直に受け取った。
 かと思えば、次の瞬間にはリディアの肩に顎をのせてくる。

「……洗ってって言ったでしょ?」
「リディアが構ってくれない」
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