無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 怒りに満ちた父の顔を、リディアは生涯忘れることができないだろう。

 ──たかがフォシニ。

 父にとってはそうでも、リディアにとっては違った。ジェイはかけがえのない友達だった。

「ふっ、ふぇ」

 気を抜くと大声で泣きだしてしまいそうで、リディアは必死に涙をこらえる。声をあげて泣いては、また父に怒られてしまう。
 堪えきれない涙で滲む景色の端に、弔旗が映る。

(王子様は、死者の世界でジェイに会えるのかしら)

 もしそうなら、ふたりには友達になってほしいと思った。
 ジェイはとても優しい少年なので、きっと王子のいい遊び相手になってくれるはずだ。

(フォシニなんて制度、なくなってしまえばいいのよ)

 小さな手の両指を絡ませ、リディアはひとり祈りを捧げる。
 小さな王子と大切な友人が、安らかな眠りに付けますようにと。
 リディア・グリーン、五歳のときの出来事だった。
 

◇ ◇ ◇


 その日、リディア・グリーンは日課となる薬草の納品を終えて、町の裏通りを足早に歩いていた。
 この辺は王都でもあまり治安がよくない。麻薬の密売人や無許可の奴隷商が蔓延ってる。

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