無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 言われた本人ではないリディアですら、背筋がゾクッとするような冷えた声だった。

「はっ。たかがフォシニ風情が生意気な」

 セドリックは乾いた笑いを漏らすと、再び片手を上げようとする。

(いけない!)

 また魔法を使おうとしている。

 セドリックの性格からして、相手がフォシニだと分かっていたら手加減なんてしない。平気で重傷を負わせるし、下手すると死んでしまうかもしれない。
 セドリックが最低な男であることは間違いないが、腐っても貴族。争っても何もいいことなんてない。

「レイ、もう帰ろう!」

 リディアはレイとセドリックの間に体を滑り込ませると、レイの顔を包み込むように頬に両手を添える。

「早く帰って、一緒にご飯作ろう」
「……肉は?」
「まだ少し残ってるから大丈夫だよ。レイが大好きなスープを作ろうよ」
「そっか。じゃあ帰る」

 レイはへらっと笑うと、いつものようにリディアの手に頬擦りして甘えてくる。

(よかった。いつものレイだ)

 リディアはホッとする。
 さっきのレイはいつもとは別人のようだった。

「帰るよ、レイ」

 リディアはレイの手を握り、歩き始める。

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