無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
「リディア、待て!」

 またもやセドリックに呼び止められ、リディアは立ち止まって振り返る。

「セドリック様。もうこれ以上私を失望させないでください」

 セドリックの目が大きく見開かれる。
 リディアはくるりとからだの向きを変えると、今度こそ振り返ることなく歩き始めた。

 帰りは二人とも無言だった。
 黙々と歩いて家にたどり着くと、リディアは淡々と料理を始める。いろんな感情が溢れてきて、何もしていないと涙が溢れてしまいそうだ。

「リディア、泣いてるの?」

 隣に立つレイが心配そうにリディアの顔を覗き込む。

「え? 玉ねぎを切ったせいかしら。やあね」

 リディアは無理に笑顔を作り、気丈に振る舞う。

「……ねえ。あいつリディアのこと婚約者だったって言ってたけど、本当?」
「あ、それは……」

 リディアは言葉に詰まる。
 
「……本当なんだ?」
「ずっと昔のことよ」

 リディアはスッと目を反らす。
 セドリックとの婚約が破棄されたのは、リディアが勘当された直後だった。もう五年も前のことだ。
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