無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 これまでも彼とは町で偶然遭遇することが何度かあったけれど、ここ一、二年は会わなあったのですっかり油断していた。

「……やっぱり殺しておけばよかった」
「え? 何?」

 レイがぼそりと呟いた言葉がよく聞き取れず、リディアは聞き返す。

「俺、あいつのこと嫌い」
「あいつ?」
「さっきのやつ。あいつがリディアに触ったことも、リディアを侮辱したことも、全部腹が立つ」

 レイは台所の作業台に片手をつくと、リディアを見つめる目を細めた。

「ねえ、リディア。リディアもあいつのこと嫌い?」

 ぞくりと、背筋に冷たいものが伝う。
 声は穏やかなのに、息ができないような圧迫感だ。


「……なんでそんなこと聞くの?」
「俺があいつのこと、消してきてあげよっか?」

 リディアはひゅっと息を呑む。

「レイ? 何を言っているの?」

 消すとはどういう意味だろうか。セドリックに遭遇した際にレイが『あんた、死にたいの?』と告げていたことを思い出し、嫌な予感がする。

「もう二度と会いたくないんだよね? さっきあいつにそう言ってた」
< 40 / 126 >

この作品をシェア

pagetop