無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 その表情があまりに穏やかすぎて、かえって胸がざわつく。まるでアーバン侯爵家で爆発があったことを、最初から知っていたかのような態度だ。

 昨夜の外出。そして、「消してきてあげよっか?」という言葉。

(偶然よね?)

 リディアは自分に言い聞かせる。

 彫刻のように、きれいな顔。
 子供のように、甘える仕草。
 どこかの誰かのフォシニだったという事実。
 そして、ときどき覗く、底知れない仄暗さ。

(レイは、いったい何者なんだろう?)

 そんな疑問が湧いて、リディアは首を振る。
 何者だっていい。彼が独り立ちするまで面倒を見ると約束したのだから。

 ひとつだけ確かなことは、レイが来てからリディアの日常に人のぬくもりが加わったこと。
 今はそれだけで、十分だった。




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