無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 それこそ、当代一の大魔術師とされるダリウス・クロウウェルぐらいではないだろうか。

「へえ。あれって難しいんだ? 知らなかった」

 レイは驚いたような顔をしている。

(転移魔法を誰でも簡単に使えると思っていたの? そっちのほうが驚きなんですけど⁉)

 リディアは呆れる。しかし、フォシニとして地下室に幽閉されて生きてきたレイが世間知らずなのは、仕方がないことなのかもしれないと思いなおす。

「転移魔法は使わなくても、本当に俺の魔力が欲しくなったら言って」
「言わないわよ」
「少しだけでも試してみてよ。全身から俺の魔力が漂うリディアを見たい」
「試しません」
「残念」

 リディアが睨むと、レイは楽しそうに目を細めた。やっぱりからかっているとしか思えない。

「リディアは怒った顔も可愛いね」

 甘く蕩けるような眼差しを向けられ、リディアの胸はざわめく。
 昨日より薬草汁が苦く感じたのは、レイが砂糖菓子みたいに甘いからかもしれないと思った。



 リディアは結局、次の乗り合い馬車に乗ってレイと町に出た。馬車の座席に、リディアはレイと並んで座る。

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