無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 状況が理解できない。これはまるで、拘束魔法のような──。

「……リディアに」

 ぽつりと、レイの低い声が聞こえた。

「近づくんじゃねーよ!」

 次の瞬間、空気が裂けた。
 魔獣の前脚が、何の前触れもなく弾け飛ぶ。肉と骨が宙を舞い、血飛沫が広がった。

 魔獣が絶叫するその光景を、リディアは呆然と見つめた。
 痛みから、ギャインギャインと魔獣は鳴く。

「うるさい」

 レイは短く吐き捨てる。リディアが聞くことのない、冷えた声で。
 レイが片手を振ると、今度は光が放たれた。
 見えない業火に焼き尽くされるかのように、悲鳴を上げる魔獣の体がぼろぼろに崩れ落ちてゆく。あとには、バラバラになった魔獣の残骸が地面に散らばっていた。


 幼獣たちはレイを見て、怯えたように尻尾を巻いて逃げ出す。
 レイはその後ろ姿を見送ると、ゆっくりと振り向いた。

「リディア、大丈夫?」

 心配そうにリディアを覗き込むレイは、いつもと変わらぬ様子だ。
 リディアは言葉を失ったまま、彼を見つめる。

(どういうことなの? レイは魔法使い? でも、フォシニなんじゃ──)

 頭が混乱する。
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