無能魔女の甘すぎる誤算 ~成り行きで助けた最強魔術師様が熱烈に求愛してくるのですが~
 リディアは感嘆の声を上げる。
 ここに来たときははっきりと刻まれていいた印紋は、今の十分ほどで明らかに薄くなっていた。

「これを刻んだ魔法使いは、相当の使い手であることは間違いないな。一度ではこれが限界だ。だが、何回か繰り返せばかなり薄くなるだろう」

 シリルは落ち着いた口調で説明する。

「わあ。よかったね、レイ! 何回か通えば消えるって!」

 リディアは喜んでレイに笑いかける。
 フォシニの刻印がレイが自由に生きるためには妨げになっている気がして、どうしても消してあげたかったのだ。

「おい、リディア。一回につき肩もみ三十分だからな。忘れるなよ」
「わかってますって!」

 シリルに釘を刺されて、リディアはぷくっと頬を膨らませる。そのとき、「俺がやる」という声がした。

「おっさんの肩もみ、俺がやる」

 リディアはきょとんとしてレイを見る。

「え。レイは気にしなくていいよ。私が勝手に師匠に頼んで、引き受けてもらったんだもの」
「でも、俺の刻印を消してもらったんだから俺がやりたい。これ以上、リディアに貸しを作りたくない」

 はっきりと言われた瞬間、胸がずきっと痛んだ。
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