敗戦国の皇子に片想いしてしまったら、思ったよりも溺愛されました
「建前でございます」

使用人の声は低かった。

「またヴァルティエ帝国が何かしてきたら、その時はノア皇子の命もないでしょう」

「そんな……」

思わず声が震えた。

命は助かった。

そう思ったばかりだったのに。

本当はまだ、あの人の命は誰かの手の中にあるのだ。

自由ではない。

生かされているだけ。

「でも、ノア皇子は何もしていないわ」

「姫様」

「民のことを願っていただけよ。自分の命と引き換えにって……」

そこまで言って、私は唇を噛んだ。

敵国の皇子。

分かっている。

けれど、あの人をただの敵だとは思えなかった。

使用人は困ったように眉を下げる。

「お優しいのですね、姫様は」

「優しいわけじゃないわ」

私は首を振った。

「ただ……」

ただ、胸が痛い。

あの真っ直ぐな瞳を思い出すだけで、苦しくなった。
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