敗戦国の皇子に片想いしてしまったら、思ったよりも溺愛されました
名前を呼んだだけなのに、胸が小さく跳ねた。

距離が一歩、近づいた気がした。

昨日は血と土に汚れていた彼も、今日は違っていた。

湯船に入ったおかげか、髪も顔もさっぱりしている。

濡れたように艶のある髪。

涼しげな目元。

すっと通った鼻筋。

その端正な顔立ちに、胸がどきりとした。

「どうかした?」

「い、いいえ」

私は慌てて首を振った。

ノアは不思議そうにしながらも、ソファへ案内してくれる。

私は彼と並んで腰を下ろした。

「ねえ、ノア」

「はい」

「あなた、怖くないの?」

ノアは少しだけ目を細めた。

「どうして?」

「……あなた、人質なのよ」

言葉にした瞬間、胸が苦しくなった。

「自国が何かしてきたら、命の保証はないのよ」
< 14 / 18 >

この作品をシェア

pagetop