敗戦国の皇子に片想いしてしまったら、思ったよりも溺愛されました
ノアはすぐには答えなかった。

ゆっくりと考えるように、視線を落とす。

そして静かに言った。

「元来、捕虜とはそういうものですよ」

「ノア……」

「敗れた以上、こちらに選べることは多くありません」

その言葉は淡々としていた。

けれど、諦めとは違う気がした。

現実を受け入れている声だった。

「少なくとも、俺は今、生きている」

ノアは私を見た。

「それだけで十分だ」

胸が、ぎゅっと締め付けられた。

十分なわけがない。

自由を奪われて。

祖国へ帰ることもできなくて。

命まで人質にされて。

それなのに、彼は今生きているだけで十分だと言う。

「フィオナ?」

驚くノアの声が近い。

私は彼の胸に額を寄せ、ぎゅっと抱きしめた。

「生きているだけで十分なんて、言わないで」

ノアの体が、わずかに強張る。

「あなたには、もっと望んでいいものがあるはずよ」

しばらく、ノアは何も言わなかった。

やがて彼の手が、ためらうように私の背へ回る。

「……ありがとう」

その声があまりに静かで、優しくて。

私はますます、彼を放っておけなくなってしまった。
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