敗戦国の皇子に片想いしてしまったら、思ったよりも溺愛されました
けれど、その三日後。

大広間に連れてこられた人物を見た瞬間、私は言葉を失った。

「ヴァルティエ帝国第二皇子、ノア・ヴァルティエでございます」

兵の声が広間に響く。

そこにいたのは、一人の青年だった。

手には鎖がかけられている。

髪は乱れ、ぼさぼさだった。

顔は土と煤で汚れていて、頬には乾いた血の跡がある。

身に着けた鎧も傷だらけで、血に塗れていた。

それが敵の血なのか。

彼自身の血なのか。

私には分からなかった。

ただ、痛々しかった。

目を背けたかった。

勝利とは、こういうものなのだろうか。

私達が喜んだ勝利の向こう側には、こうして敗れ、傷つき、囚われた人がいる。

そう思った瞬間、胸が苦しくなった。

けれど私は、目を逸らせなかった。

ノア皇子は、父であるエルドリア王の前に立っていた。

捕虜として連れてこられたのなら、怯えてもおかしくない。

命乞いをしてもおかしくない。

膝を折って許しを請うても、おかしくないはずだった。

それなのに、彼は真っ直ぐ父を見ていた。

敗れてなお、その瞳は曇っていない。

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