敗戦国の皇子に片想いしてしまったら、思ったよりも溺愛されました
汚れた顔。乱れた髪。血に塗れた鎧。

それでも彼の姿は、なぜかひどく気高く見えた。

「……あの方が、ノア皇子」

小さく呟いた私の声は、誰にも届かなかった。

広間の貴族たちは、勝者の顔をして彼を見ている。

けれど私は、同じようには見られなかった。

それなのに、その瞳だけが私を捕らえて離さなかった。

父を見据えるノア皇子の横顔に、私は息をすることさえ忘れていた。

どうしてだろう。

敵国の皇子なのに。

敗戦国の捕虜なのに。

この国にとって、きっと警戒すべき相手なのに。

胸が、静かに高鳴っていた。

私はその時、まだ知らなかった。

この日、大広間で見た傷だらけの皇子から、もう二度と目を逸らせなくなることを。
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