敗戦国の皇子に片想いしてしまったら、思ったよりも溺愛されました
けれど、ノア皇子が口にした言葉は、そのどれでもなかった。

「私が心を砕くのは、我が国の民です」

胸が締め付けられた。

自分のことではないのだ。

この人は、捕虜として敵国の王の前に立たされているのに、まず民のことを考えている。

父がわずかに目を細めた。

「民、か」

「はい」

ノア皇子はまっすぐ答えた。

「戦に敗れたのは分かっています。ヴァルティエ帝国は、エルドリア王国に敗北しました」

広間が静まり返る。

敗北を認める言葉。

けれどそこに、卑屈さはなかった。

「ですが、我が国の領民は許していただけないでしょうか」

父はすぐには答えなかった。

長い沈黙が落ちる。

私の指先が、ぎゅっとドレスを握りしめていた。
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