敗戦国の皇子に片想いしてしまったら、思ったよりも溺愛されました
父は、しばらくノア皇子を見下ろしていた。

大広間のざわめきも、いつの間にか静まっている。

「……面白い男だ」

父がそう呟いた瞬間、周囲がまた小さくざわめいた。

ノア皇子は表情を変えない。

「陛下」

「そなたは、自分の命を差し出してまで民を守りたいと言ったな」

「はい」

「その言葉、偽りではあるまいな」

ノア皇子はまっすぐ父を見た。

「偽りなら、ここで口にはしません」

その答えに、私は息を呑んだ。

父はしばらく黙ったあと、ふっと笑った。

「よかろう。そなたを処刑するのはやめだ」

「陛下……!」

周囲の貴族たちが驚きの声を上げる。

私も胸の奥で、張り詰めていたものがほどけるのを感じた。

よかった。

ノア皇子は生きられる。

けれど父は続けた。

「ただし、自由に帰すわけにはいかぬ」

ノア皇子の瞳がわずかに揺れる。
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