君が照らす人生は、いつだって温かい
「バンドってね」
義母は、遠くを見るような目をした。
「一人だけじゃ成立しないのよ」
「うん。分かってる」
「トランペットは、一人でも吹けるし、最悪、伴奏なしでステージにも立てる。でも、バンドは、誰か一人欠けたら、急に穴が空く」
カレーの匂いの中に、
遠いブラスバンドの音が混ざる気がした。
「だからこそ、〝途中でやめるかもしれないけど〟って気持ちで入ると、すごく迷惑だと思う」
その言い方は、
責めているというより、
心配しているように聞こえた。
「……分かってる」
「ほんとに?」
「分かってるつもり」
義母は、少し笑う。
「じゃあさ」
テーブルに肘をついて、顎を乗せる。
「今ここで、〝途中でやめない〟って約束できる?」
その問いは、胸にぐさっと刺さった。
約束。
期限。
裏切り。
『途中でやめる自分』が、頭をよぎる。
「……できない」
しばらく考えてから、首を横に振った。
「ごめん。最後までやりきるって、自信持って言えない」
義母は、意外そうに目を瞬いた。
それから、
少しだけ肩を落としたように笑う。
「そう言うと思ったわ」