君が照らす人生は、いつだって温かい



その夜。

病室の灯りが落ちたあと、
スマホの画面だけが小さく光っていた。

動画サイトを開く。

『傘を閉じる前に ライブ』と検索窓に打ち込む。

あのバンドの、去年のツアー映像。

暗いステージ。

スポットライト。

ギターのアルペジオ。

ボーカルが、
『傘を閉じる前に』のイントロを歌い出す。

客席のざわめき。

スマホのライトの海。

サビで一斉に上がる手。

プロのステージ。

でも、そこに重なるのは、
あの日の空き教室の光景だった。



「今日もちゃんと、ここにいるね」



山谷さんの声。

少し不安定で、でも必死で。

誰かに届こうとする声。

病院のベッドの上で聴いたときよりも、
ずっと近くに感じる。

あの声が、自分をここまで連れてきた。

川沿いの夜から。

体育館のコートから。

病室の白いカーテンまで。


――バスケ以外の場所でも、
全力出してる自分、見せたくない?

美由紀の言葉が、頭の隅で小さく点滅する。

バスケをやめろと言われたわけじゃない。

でも、
〝前と同じようには戻れない〟と宣告されたのは事実だ。

だったら。

だったら俺は、何者になればいい。

『エース』じゃない自分。

『コートの中の司令塔』じゃなくなる自分。

そのイメージが、まだちゃんと形にならない。

画面の中のボーカルが、マイクを握りしめて叫ぶ。

汗と涙と、全部混ざったような声。

ステージの端っこで、ギターが必死にコードを刻んでいる。


――やる側。


ふと、そういう単語が浮かぶ。

空き教室で、ギターの弦をびーんと鳴らした夜。

あのとき感じた『うずうず』が、
足首の痛みの横でまた騒ぎ出していた。
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