台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「ふわぁっ」
興奮して上擦ったひよりの声が、甘ったるくなった空気に響く。
「ばかっひより!」
続いて彩加の声がして、むぐっとひよりの口が塞がれた。
紫苑の横顔越しの美玲は、驚いているような照れているような顔をして言葉を失っている。
紫苑の顔もちょっと赤くて、僅かに唇を尖らせている。
(おいしいシーン作ったんだから、感謝しなさいよ?)
なんて思いながら、私はムッとして不機嫌を装った。
――バタン!
ドラマチックな雰囲気を、リビングのドアが開閉された音がぶち壊す。
全員がビクッと肩を跳ねさせた。
音のした方には、後ろ手に何かを隠した湯上がりの陸がいる。
ツンツンと尖る毛先は、まだ湿っている。
顔を真っ赤にして、眉根を寄せて誰とも目を合わせようとしなかった。
「……どした?陸」
大和が野良犬と距離を詰めるかのように、ゆっくりと陸に近づく。
「ストップ!大和さんは来ないでください!」
陸は片手を前に突き出して、大きな声でそれを制止した。
「なに?どしたん?」
彩加が不審そうに首を傾げる。
すると陸は、おずおずと気まずそうに後ろ手に隠した紙袋を彩加に差し出した。