台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
先に家に入っていくカメラマンの後を、私と紫苑はだらだら歩く。
潮風が暑さを和らげてくれてるけど、真夏の空の下はやっぱり暑い。
今回の2ショットタイム、紫苑の決め台詞以外カットされたりしないよね?
そのぐらいのイレギュラーが起こってた。
暑い中わざわざ外出たのに。
私の見せ場だけ帳消しとか、ありそうすぎて怖いわ。
頭の中で文句を言っていると、後ろを歩く紫苑が不意に私の手を引く。
ととっと足がもつれたのを、紫苑が体で受け止めた。
ちょっと汗っぽい、濡れた体温が軽く触れ合う。
甘く落としたミドルボイスが、耳元に優しく落ちてきた。
「あーやって言わないと、番組的にはNGでしょ?」
思わず勢いよく振り返ると、紫苑は声通り甘くて危うい笑みを浮かべている。
返す言葉に迷っていると、紫苑の顔がぐっと近づく。
耳元に寄せた唇が、間接的に私の鼓膜をくすぐった。
「実際のとこの1番は、瑠奈ちゃんだから。
――今のところね」
バッ思わず素で飛び退く。
掴まれていた手は距離ができるとあっさりと離されて、赤くなっている私の顔を確認した紫苑は満足そうに微笑んだ。