台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
(というか。名前とか歳とか、基本情報しか知らないんだよな)
それ以外を知ってどうするって感じだけど。
私たちは今、恋リアの舞台の中で生きているだけだもんね。
――タン、タン
無音に近い静寂に、誰かが男子フロアの階段を降りてくる音が聞こえる。
瞬間、跳ねるように立ち上がって、その人が姿を現すのを待つ。
薄暗がりに、ぼやりと浮かんで見える高い背丈。
寝癖ひとつない漆黒の髪と黒いTシャツのせいで、夜に紛れてしまいそう。
静かな目が、じっと私の姿を捉える。
爽真のことを見た瞬間――
安堵とか喜びとか、いろんな感情で胸がいっぱいになった。
「爽真……」
すぐの返事はない。
爽真がゆっくりと私の方に歩いてくる。
ソファの裏から回り込んで、私の目の前に立つ。
相変わらず、向かい合う時の距離が近い。
ほんの数十センチの距離から、そっと私の頬に手を当てた。
「昼間は平然としてたクセに。
……なんて顔してんの」