台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「……それは、もういい。」
重く、静かに落ちる声。
緩く首を振った爽真が、まっすぐに私を見つめた。
「けど、悪意には鈍感にならないでほしい」
悲しそうな目に、ズキンと心が痛む。
「……」
……痛むけど、返事はできない。
だって痛みに鈍くいなくちゃ、私は“瑠奈”でいられない。
揺れた瞳を、そっと逸らす。
それを爽真は見逃さない。
「返事は」
「しない」
「する空気だったろ」
「知らない」
キリキリした顔をする爽真に、苦笑混じりに息を吐く。
体の横にある手が、自分の意思を鈍らせないようにパジャマの裾を握り込む。
揺れないようにしっかり目を開いて、爽真に視線を戻した。
「私は、“悪女の瑠奈”を演りきりたい。
それが女優・香月瑠奈に任せられた仕事だから」
姿勢を正して、堂々と。
爽真の心が、できるだけ傷まないように。
「そのために、これからも傷は受けにいく。
でも、怪我するのは本当の私じゃない。爽真が1番よく知ってる――でしょ?」
最後にふっと緩んだ顔に、爽真の指先がぴくりと動く。
私は大きく息を吸って、しっかりと笑顔を作った。