台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「紫苑くん♡一緒に――」
「美玲ちゃん。一緒に……」
灼熱に蕩ける甘い声と、場を避暑地に変えそうな清涼感のある声が重なる。
言ったのと同時に腕を捕まえた紫苑と、顔を見合わせた。
――やば、被った。
“台本”って言っても、細かにセリフがあるわけじゃない。
今朝急に、“こういう段取りで紫苑を誘って”と指示が出た程度。
おまけに自分宛て以外の指示は全く知らされないから、誰がどう仕掛けるかはわからない。
美玲が、“あっ”という顔をしかけたのを引っ込めた。
爽真は……日差しが眩しいのか、渋い顔。
その目線の位置はちょうど私が紫苑に張り付いている腕辺りだから、日差しをくらうような高さじゃないのに。
変なの。
「……えーと、」
紫苑は私を見たまま、返答に迷っている“ような”仕草をする。
その目の奥はなんとなく、楽しそう。
“こういう時、君はどう対処するの?”って、そんな挑戦状を叩きつけられている気がした。
蜂蜜色の髪が海の青を背景に、今日は一段と輝いている。
紫苑の真っ白な前開きラッシュガードが、潮風にひらりと靡いた。
(煽られたら受けて立つ。なぜなら、ムカつくから)