台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「ごめん!まさかこの深さで沈むなんて思わなくて」
頭上には、本気で狼狽している紫苑の声。
私を抱きしめるみたいにして支える腕からは、必死な力強さを感じた。
支えられてることで少しだけ落ち着いて、海底に足を伸ばせる。
足、つく。結構しっかり。
顔も出るし。波が来ると口元まで水が跳ねるけど。
なんだ、焦った。バカみたい。
足の裏に感じる柔らかい砂の感触に、急にホッとして――
「……死ぬかと思った……」
ぼそ、と思わず本音が溢れる。
まだ恐怖に胸はドキドキしていて、無意識に紫苑の腕の中でぎゅっと縮こまった。
それに気づいた紫苑が、途端に弱った顔になる。
私を抱きしめる力は強いままなのに、なんとなくその手つきが優しくなった気がした。
「本当にごめん……怖い思いさせたよね。
やりすぎた。もう絶対しないから……」
罪悪感に落ち込んだ、真摯な声色。
浮き輪を抱えていた紫苑の片手が、それを手放す。
ブルーの浮き輪がゆらりと波に乗って、流されていきそうになる。
そして、紫苑の手が躊躇いがちに濡れる私の後頭部へと伸びた――
その時。
「15分経った。交代」
いつのまにかそこにいた爽真が、強引に紫苑の腕の中から私を奪い取った。