台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―


「ちょっと待っててね?瑠奈、今真剣だから」

「っ、」

言葉通りに真面目な顔になって浴衣の方を向いた私に、紫苑が言葉を詰まらせる。


私はふむ、と顎に手を当てながら、もう一度浴衣を吟味し始めた。


裏の顔的に妙な色気もあるから、意外と暗めな色もアリ?

いや、でも表のイメージ!
ギャップってことにすればいける?


浴衣を手に取ってはすぐ戻すを繰り返す。


視聴者にセンスないやつ認定されたら、今後の私のイメージにかかわる。

そしてなにより。


紫苑というメインヒーローに似合わないものを着せるなんて、そんな戦犯許されない。


浴衣と睨めっこしてどんどん険しくなっていく私の横顔に、ずっと呆気にとられていた紫苑の表情が徐々に和らいでいく。


「……すごく真剣に選んでくれるんだね」

紫苑の声色に、ほんの少しの照れが混じっていた。

「んー?瑠奈、男の子のかっこいいが半減するのも許せないから」


――漏れ出た感情にも気付かず、私はさっきも使った口実を使って受け流す。


「ふーん、そっか」


紫苑がさりげなく顔半分を手で覆って、口元が緩みかけたのを隠す。


ちょっとしてから、私は淡い灰青色の落ち着いたデザインの浴衣をついに手に取った。
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