台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
(……なんか、緊張する……)
ぎこちなく一歩、リビングに足を踏み入れる。
部屋が無駄にしんとしてるせいだろうか?
(気まずい……爽真の顔、見られないな)
自分のキャラに合わないって言っておいて、結局爽真の選んだ浴衣着ちゃってるし。
この浴衣を着た自分の雰囲気が普段と違いすぎる自覚もあるから、余計に反応が怖くて。
珍しく漏れ出た緊張が、目線を床に下げさせる。
ぎこちない足取りが、ゆらゆらと浴衣の裾を僅かに揺らす。
藍紺に咲く白い牡丹の花が、その度に目について心を揺さぶった。
「……なんか、いつもと雰囲気違くね?」
「わぁ〜♡瑠奈ちゃん大人っぽいです!」
陸とひよりの声に反応して、無意識に視線がそこに流れ、ぼうっと幽霊のように立ち止まる。
白くて細い首筋に、後毛が張り付いたままの虚ろな表情。
その姿に、2人が同時に息を呑む。
誰かも息を止めたような気配がして、周りの空気の色もガラリと変わった。
「どっ……どどどうしたんですか!?瑠奈ちゃん!
急に大人のお姉さんみたいですっ」
「そうだぞ!お前、そんなんじゃないだろ!」
わっと、目の前にひよりと陸が迫ってくる。
2人とも顔を真っ赤にして、動揺に目を泳がせている。
「え?……あっ」
その迫力に圧倒されて、我に返った。
やばっ!私としたことが、カメラの前なのに完全に気が抜けてた!
周りを見れば、スタッフも含めてその場にいる人全員がぽかんとしてこっちを見ている。
慌てて頭をフル稼働させて、いつものウザいくらい明るい笑顔を作った。