台本通りの恋はしない!
「はいっ!いっこお願い、いーですかぁ?」
パン!と手を叩いて空気の流れを戻してから、上目遣いで人差し指を立てる。
フリーズしてたみんなが、言葉に詰まりながら「どうぞ」と頷いた。
「2ショットタイムしたいですっ
――紫苑くんと♡」
無邪気に笑って、紫苑に向かって思いっきり両手を広げる。
「い゛っ!?」
ドン引きしてる陸が、思わず声を漏らす。
他のメンバーもみんな、「マジかよ」みたいな顔で私を見た。
「……いい、けど……早いね?」
戸惑いを隠せてない紫苑が、苦笑いして頬を掻く。
「やった♪ありがとー♡」
私はそれに気付いていないことにして、紫苑の腕を取るとリビングの外に引っ張っていく。
完全なアドリブに、慌てて追いかけてくるカメラマンとスタッフ。
ちら、と巻さんやディレクターの顔色も確認――
――よし、何も言ってこない。
嫌われ者のクラッシャーっていうキャラから逸脱しなければ、ある程度のアドリブは認めてもらえるみたいだ。
美玲も複雑そうな顔してるし、いい絵撮れたでしょ?
場にいる全員を置いてけぼりにして、紫苑と2人、リビングを出ていく。
「ヤバくない!?何あの子!」
「肉食すぎてついていけませぇん……」
カメラが止まったリビングで、みんながざわついている中――
爽真だけが、静かに閉まったドアを見ていた。