台本通りの恋はしない!
空気読めないふりして、嫌われて。
そんなムーブしか許されない中で、わたしは必死に足掻いてるだけだ。
さっきとは別の意味で体温が上がっていく。
イライラが止まらない。冷蔵庫にかけた手が、ギッと爪を立てる。
「今回のメインが誰か、わかってんの?」
その一言が、張り詰め切った私の心の糸に触れる。
ミルクティー色の髪の、あの子の姿が脳裏に過って――
震える唇に、ついに我慢の限界が来てしまった。
この世界の中心が、誰かなんて。
「……誰よりも理解してるっつーの」
自分でも驚くくらいの低い声。
爽真の鋭い視線も思わず緩んだ。
冷蔵庫にかけた手に力が入る。
頑張って大きく開いていた目を思いっきり吊り上げて、今度は私が睨んでやった。
「番組にも周りにも推されてるアンタに、私の事情は一生わかんないでしょうね!」
力一杯爽真の肩を押して、走り去る。
そんな私を、爽真は引き止めることはしない。
ただ、閉じかけた冷蔵庫の光の中で、動けずに立ち尽くしていた。