台本通りの恋はしない!

ウザったそうな顔をした社長が、耳に入れた指をそっと外す。

「いちいち喚くなよ……
ったく。潰れそうなだけで、潰れる、なんて言ってねぇだろ」

社長はうんざりして息を吐くと、仰々しくデスクに肘をつく。
歳を重ねた迫力のある目が、ギラリと光った。


「起死回生の策はある。
 それがお前だ。瑠奈」


――私?


唐突にそんなことを言われて、眉を顰める。
社長は何故か強気に微笑んで、低く手を挙げた。

御手洗(みたらい)

ずっと社長の背後霊みたいに無言で控えていた男が、音もなく一歩前に出てくる。


狐のような切れ長の吊り目に、銀縁メガネ。
それに被る長さの前髪を流した、鬼⚫︎郎みたいな髪型が特徴のこの男は、社長秘書兼マネージャーの御手洗 修吾(みたらい しゅうご)

歳は確か、27歳。

事務仕事は優秀だけど、営業はまるでダメなマネジメント適性のない男だ。

「香月さん」

御手洗が、無機質な声で私の名前を呼ぶ。

「貴女に――大口の仕事が来ています」

「――はっ?」

咄嗟に言葉を処理できなくて、間抜けな声を出したまま固まる。

御手洗はそんな私を気にも留めず、手に持っている書類をパンと叩いて話し続けた。


「恋愛リアリティショー。
大手配信サイト“FLiP ONE”の人気番組の出演依頼です」


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