台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
Ep.61 台本の神に牙を剥け!
7:00。
美玲と紫苑の朝食作りをひとしきり邪魔した後――
大和が起きてきたタイミングで私はリビングから離脱して、シェアハウスの外に出た。
目指すは、巻さんのいるプレハブ部屋。
巻さんはよく夜通しそこで仕事をしてるって、スタッフたちの噂話で聞いたことがあったから、いると見込んでの突撃だ。
本来アポを取っていくべきところなんだろうけど、そうも言ってられないし。
それに、意表をついた方が案外ことが上手く運ぶんじゃないかと思って。
美玲の時とは違う緊張を握り込んで、薄いドア板をノックする。
「はい」
無骨で、すこししゃがれた巻さんの声がする。
「――失礼します」
深呼吸してから堂々と胸を張って、日を浴びて暑くなったドアノブを回した。
相変わらず、中は薄暗くて寒いくらい涼しい。
無機質なモニターは整然と並んでいるのに、背景の配線とデスクの上の紙類は散らばっている雑然とした部屋。
その空間を切り抜くように朝日を背負って入ってきた私に、巻さんは驚いたような顔をしていた。
「アポも取らず、すみません」
まずは礼儀正しく。
腰を深く折ってお辞儀する。
巻さんとちゃんと話すのは、初日以来2回目。
映像の中の、巻さんが指示した“私”とのギャップを彼はどう捉えているのだろう?