台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
「今日は巻さんに、“ご相談”があって来ました」
「……相談?」
巻さんの目が鋭く細くなって、警戒を示す。
パイプ椅子に深く凭れていた上体が、前のめりになった。
間に挟まるべき人全員をすっ飛ばして、トップに相談持ち掛けるなんて――余程のことだと身構えるのは当然だ。
「相談というより、お願いですね。
今後の生配信と、できれば通常の番組で――
成宮くんと私の絡みのカットを、意識的に増やしてほしいんです」
巻さんの顔がさらに怪訝な顔になる。
“そんなことを願う心境がわからない”そう言いたそうな顔だ。
「演出や番組構成は私が責任を持ってやっている。
一演者の意見を無条件に通すには――」
「白石さんに、結末の選択権を与えたそうですね」
言葉を遮って、背筋を伸ばしたまま巻さんを見下ろす。
馬鹿なことをしたなと、冷ややかに、見下すような気持ちを作って。
「成宮くんから聞きました。
瀬名くんとの恋愛線がウケたから、2人の間で揺れる美玲のリアルを作ろうと意図したんですか?
でも、残念。そうはならなかったですね」
何故なら、美玲が本当に好きだったのは爽真だったから。
許された瞬間、逆に美玲は意志を固めて爽真を一途に追い始めた。
「私達のことを駒としてしか扱わないから、盤面を見誤るんです。
私達は約1ヶ月、24時間生活を共にしているんですよ?
台本外の感情が生まれることだって、往々にしてあると思わなかったんですか?」
年季の入った巻さんの頬が、ピクピクと痙攣している。
偉そうに思わせる開いた足が、トントンと落ち着きなく動き始めた。
「思春期の男女を一か月も共同生活させて、恋を番組にしてるんだ。そのくらい想定して、今までやってきている。
現に、君と瀬名くんの綻びは上手く潰せていたはずだ」
「……え?」