台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
右手に不自然に力が入る。
何かを探すみたいに握って、スカートの裾を巻き込んだ。
「……まぁ、その後大きな逸脱もなかったから静観していたけどね。
それで?瀬名くんなら感情的な我儘として理解できるけど、成宮くんとの絡みを要求した意図は?」
私の強気を頭から叩いて大人しくさせて、巻さんは面倒くさそうに書類に目を通し始める。
そこで私もハッとして、呼吸を整えてもう一度巻さんに向き直った。
「……白石さんが瀬名くんに傾く状況に、説得力を持たせたいからです」
私から興味を失っていた巻さんの目が、もう一度私に戻る。
品定めをするかのような、厳しく、無機質な目線だった。
「“美玲”だけを見ていた優しい“紫苑”を、“瑠奈”が奪うムーブを増やす。
それを“美玲”が、“紫苑が瑠奈に傾いている”と勘違いして傷つく。
その隙間に入り込んだのが“爽真”だった――
そういう後付けの構図を作りたいんです」
巻さんが、ゆっくりと手にしていた書類を置く。
感心しているような、少し恐れているような――そんな様子でぽかんと口を開けていた。
「君は――根っからの演者だね」
その言葉に、ドキンと胸が鳴る。
嬉しいのに痛くて、ちょっと苦い。
でも、唇は静かに上を向いていた。
「はい。私を悪女役にしてよかったと――
巻さんに思わせてみせますよ」