台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
♡
10:00。
今日のミッションが始まる前に、紫苑を呼び出す。
「紫苑くん♡2ショットタイム、しよっ?」
美玲と隣り合ってダイニングテーブルでコーヒーを飲んでいたところで、わざわざ仕掛ける。
紫苑は今日も上手に目線を泳がせて迷う素振りを見せながら、気まずそうに立ち上がった。
周りにも美玲にも見せつけるように、リビングを抜け出す。
いつもの庭に出て、カメラの前でただベタベタしたいだけの悪女を演りきった。
カメラマンが撤収した後、私と紫苑は同時に仮面を下ろす。
植え込みに隠れて、紫苑が私の髪を掬った。
「台本の歪みに気付いた時――
香月さんが頼るのは、俺しかいないって思ってたよ」
憎らしいくらい綺麗に微笑むその顔は、王子様のそれなのに、まつ毛が翳って艶っぽい。
「……うん。紫苑、協力して。
私は――みんな、を守りたいの」
“みんな”の前後に一呼吸の間があったことに、紫苑は気づいているけど何も言わない。
代わりに、唇に描いた弧をより深くして、掬ったままの毛先に顔を寄せた。
「ここからは契約じゃなくて、協定だね。香月さん」
ゆるくウェーブがかった私の髪に、そっと紫苑の唇が押し当たる。
私の反応を確かめるかのように、妖しく光る蜂蜜色の瞳が上目にこっちを見た。