台本通りの恋はしない!―仕組まれた恋リアで、本気で恋しちゃダメですか?―
――……
「あ、もう大丈夫なのでカメラ止めてください」
みんなに背を向けて海を眺めるテラスで、紫苑が前を見つめたまま淡白にそう言った。
言われた通りに止まるカメラ。
けど、撮影しているポーズは崩れない。
「ね?これ、いい方法でしょ?」
「……確かに。時間も人目も気にしなくていいもんね」
これは、紫苑が考えた作戦。
表舞台で堂々と作戦会議をする戦法、だ。
巻さんを味方につけたなら、スタッフにコソコソする必要なんてない。
私たちの協定を隠さなくてはいけないのは、キャストに対してだけ。
だったら、ツーショットタイムを作戦会議の場として有効活用しようってわけだ。
(巻さんにカメラマンにグルになるよう指示してって頼んだのは、私だけどね!)
心の中で、そこだけしっかり主張しておいた。
「紫苑くん。昨日のショート、見た?」
「見た見た。反応上々だったね。
体感、美玲ちゃんに同情的なのが4割。俺と瑠奈ちゃんの仲に困惑してるのが3割。好意的なのが2割くらい。
残りは瑠奈ちゃんと俺へのアンチコメ。
さすが巻さん。いい仕事するよね」
後ろ姿が殺伐としないように、相槌の合間にちょっと距離を詰めたり笑ってる横顔を見せながらやりとりをする。
「あのショートで、色恋的なアタックでなければ“紫苑”は“瑠奈”と普通に仲良くするって示せたと思うから――……
ここからは、そういう場面も意図的に増やしたいかな」
「だね。けど最終日間近って思うと、“紫苑”的にはちょっと距離置こうとするほうが自然じゃない?
けど、瑠奈ちゃんが諦めずに押してくるから困ってて――みたいな」
「あー。そうだね。じゃあやっぱり、私が美玲から紫苑を横取りするムーブで揺らす方向がいいか。
そしたら紫苑くん、自由に誘う系ミッションで美玲を誘う時は一拍間を置いてよ。そこを私が掠め取るから」
――なんか、不思議な感覚だ。